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 後宮中が大騒ぎでした。婚儀の夜から王の訪れは、王妃の母君が滞在されていた間を除いて、一度も絶えた事がなく、これは一大異変でした。

     
 一夜明けて、顔色の悪い王妃に女たちはかける言葉が見つかりません。

 そこへ高蘭英が入って来ました。

「普賢さま。安心なさってください。王は、昨晩は一人寝だったとのことです。他の女に手を出されたわけではありませんわ」
「そう。………どこか具合でもお悪いのでなければいいのだけど」
「そういうことでもないみたいです………」

 浮かない顔の王妃と共に、皆が沈んでいた後宮でしたが、昼前、俄かに騒がしくなりました。

「何事でしょうね。見て参りますね」
と、高蘭英が出て行こうとした時です。王妃の部屋の扉が、だーんと強く開け放たれました。その扉から現れたのは、なんと王です。

    
 王妃の元に駆け寄ってくると、その手を取りながら
「普賢、昨夜はすまなんだ。これから閲兵式での。今は行かねばならぬが、今宵は必ず来る。そうじゃ、一緒に風呂に入ろう。支度しておれ」
と、これだけ叫ぶように仰ると、また、慌ただしく出て行かれてしまいました。


      
 そういうわけで、今宵は二人ご一緒にお風呂です。

  浴室の前室で、お二人はお召し物を、外していかれます。王の指図で、付き従う者たちは、皆、下がらされておりました。

    
 王は勢いよく脱がれましたが、王妃様は躊躇いながら、王に背を向けて、ゆっくり身に纏っていたものを落としていきます。その後ろ姿を眺めながら、王は頬が緩むのを止められないご様子です。
 王妃は全て脱ぎ落とすと、用意された薄い布を一枚、身体に巻きつけました。

 「お待たせして申し訳ありません」
 「なんの、なんの。さぁ、参ろうか」

 そう仰ると、王妃の手を引いて、浴場に入っていかれます。

 王の治める広い帝国には、数多の種類の風呂がございましたが、王のお風呂は洗い場と広い湯船、そして蒸し風呂と、帝国中の風呂のいいところ取りをしたような仕様でした。

 「なんと申しますか、女湯より、かなり広いのでございますね」
 「何代か前に、たいそう風呂好きの王がおっての。以来、代々、改築を重ね、今ではこんなじゃ」

 王専用の風呂場はたいへん広く、湯船は床を掘り下げて作ってあり、泳ぐに十分な広さがある程でした。
      
「陛下専用のお風呂でしょう。本当に私が入ってよろしいのですか」
「わしの風呂じゃ、わしがいいと言えばいい。それに、そなたは、わしの唯一人の妃にして寵姫じゃ、誰にも文句はいわせぬ」


 王は王妃の手を引いて進むと、王妃を椅子に座らせました。
「今宵は、わしがそなたを洗ってやろう」
「そんな、畏れ多いですわ」
「まあ、よいから、わしに任せよ」

そういうと、王は手に石鹸をとり泡立て始めました。たっぷり泡立てると、王妃の背後に回って屈み込みました。その手で王妃の背中を撫でていきます。
「陛下………」
「ほんに、そなたの肌は滑らかだのう」
そう仰りながら手は腰の方へと下がっていきます。腰のあたりを撫で摩っていると、王妃が
「あ……」
と声を漏らされます。
「ん、……、そんなふうに触られては、あっ」
「そんなふうとは、どんなじゃ」
「ですから、………ん、んん」

 腰のあたりを撫でさすられていた手が、王妃の体の前に伸ばされて、そのまま胸に移っていかれました。優しく、でも、力強く揉みしだかれます。
 王妃は身を震わせながら、声をたてぬよう耐えておられます。

 王の手はそのまま王妃の腹部を撫でられると、さらにその下に移っていかれます。そこはもう王妃の夜露で湿っておりました。
「ああ、こちらも洗ってやらねばな」
そんな言葉でそのことを指摘されると、王妃は一際恥ずかしそうに身体を震わせました。
「しみるようなら、申すのだぞ」
  
 そんなことを仰いながら、王は石鹸のついた指で王妃の秘所を探っていかれます。

「あ、……」
「大丈夫か」
「……、はい、……ですが、ん……」
「よいのか?」
「あ、んん……」
「よいなら、もそっと、声を出してみよ」
「あ、ですが、声が……、声が響いてしまいます」
「心配いたすな、人払いはした」
「ですが……」
「大丈夫じゃ、そなたの良い声を聞いて良いのは、わしだけじゃ」

 そういうと、王は王妃の腰を支えて立たせると、足で椅子を蹴り飛ばしておしまいになりました。そうして、片方の手で王妃の腰を支えつつ、もう片方の手で王妃の真珠をさらに探っていかれます。

「あ、待って、あ、……、駄目、立って……立ってられない」
 王妃の足が震えておられます。

「大丈夫じゃ、わしにつかまっておれ」
「でも、あ、駄目、私だけ……駄目、望ちゃん」
 その呼び名を聞いて、王はにやりとなさいました。王妃が夢中になってきた証だからです。
「いいから、のう、ここか?」
 そういいながら、中を探る指を増やしていかれます。

 程なく
「あ、ああ……」
王妃の一際高い嬌声が風呂場に響くと、同時に、王妃は背を反らせて、そのまま、王の腕の中に倒れ込まれました。
   
 王は、王妃を力強く抱きとめると、王妃の顔を自分の方に向けさせると、軽く口付けなさいました。そのまま王妃を抱えあげると、湯船の方へ歩みを進められ、湯船に入っておしまいになりました。

 しばらく、湯船で漂っていたお二人ですが、ようやく口をきけるようになった王妃がおっしゃいます。

「陛下、駄目と申しましたのに、私だけ…」
「わしのことなら良い」
「よくありません」

 しばし、見つめ合うというよりは、睨みあっていたお二人でしたが、王妃は、下の方へ視線を移すと、不意にその身を、お湯の中に沈めました。

 そのまま湯船の底近くまで潜られると、王のそそり立つ中心へ口を沿わせると、そのまま含まれてしまいました。

「ん、待て、離せ」

 王は、王妃の髪の中へ手を入れ引き剥がそうとしますが、大事なところを含まれていては、力がどうにも入りません。まして、水の中は王妃様の領域、どうすることもできません。
 しばらくのせめぎあいの後、王は熱を吐き出され、それを王妃が受け止めました。

 王妃はお湯の中から上がっていらっしゃると
「少しこぼしてしまいましたわ」
と、ややはにかみながらおっしゃいました。そして、王の上に腰掛けるように、王と向かい合って、でも少し浮いておられます。

「まあ、構わんじゃろ。これだけ広いんじゃから。それにしても、わしはいいと言うたに」
「よくありません」

また、先程の蒸し返しになりそうでしたが
「昨夜は寂しゅうございました」
王妃がそう言って身を寄せたことで、風向きが変わりました。

「む、すまなんだ」
「どうなさいましたの」
「その、なんだ………」

王は言いずらそうに言い淀んでおられます。王妃は不安そうに次の言葉を待っておられました。

「その、な、実はな、………わし、女はお主が初めてでな、お主しか知らぬっ!」
 最初、もごもごと言っておられましたが、最後の方は一気に正に叫ぶといった調子でございました。

「?、存じておりますわ。それがどうかしましたの?」
「どうって……気にならぬのか?……ん、いや知っておったのか」
「はい、女たちが話しておりました。陛下は 、私が来るまで、どの女性にも目をかけなかったと、」

 実のところ、女たちはもっと口さがなく話しておりました。
 口をきかない王妃と侮って言いたい放題でした。実際、女たちが言っていたのは
「はーあ、偉い人の考えることは、わかんないね。どんな女にも、手をつけないと思ったら、こんな綺麗なだけのお人形さんの様なのに夢中になってさ。偉い人ってのは、やっぱり頭の螺子がぶっ飛んでいるのかねぇ」
といった調子でした。

「それで、それが昨夜のこととどう繋がるのですか」
「その、なんだ、重ねて聞くが、気にならぬのか」

「それは気になります。」
「やはり、そうであろう………」
王様が肩を落とすのに重ねる形で王妃が言葉を続けます
「気になりますわ、そして、陛下の知っている女が、私一人と知って嬉しく思っています」
「な、………なんと申した」
「だから、嬉しく思っています、と」

「その、なんだ、女は経験豊富な男のほうが、好きなのではないか?、そのなんだ、初めての時、そなた、相当辛そうであったろう。わしがもっと経験豊富じゃったら、あれほど辛くなかったのではないかと思うてのう」
「あれは……その、まあ、辛くなかったといえば、嘘になりますが、初めては、誰でもあんなものではないでしょうか。それに、叶う限り、陛下は尽くしてから、事に及んでくださいましたわ」

 王妃は王の肩に手を当てると
「確かに、経験豊富な殿方の方がいいという女もいるかもしれません。ですが、私は、違います」
 そう言うと、ご自分の方から軽く口付けなさいました。

「ふむ」
「陛下、私の方もお尋ねしたい事がございます」
「ん?、なんじゃ」
「私、おしゃべりし過ぎですか?、私が話し過ぎるのにうんざりしてませんか?、この国の女たちは、殿方の前ではもっと物静かだと聞きました」
「いや、いや、そんなことはない! そなたの言葉には、慈しみがあり、知恵がある。わし、最近は何か難しい事があると、ちょっと待て、一晩考えると言っておる。それをそなたに話していると、いい知恵が湧いてくる。わし、ここんところ冴えておると皆が言ってくれるが、それもこれもお主のおかげじゃ」
「そうなのですか?」
「それにの、お主ほど、打てば響く様に返事が返って来る者は表にもおらん」

 王様は、頭の回転が速すぎるので、臣下の方々は付いていくのが大変なのです。

「わし、お主と話すのが楽しいし、たわいもない事でそなたと笑うのも大好きじゃ。」
「では、私が話しすぎで、嫌になったわけではないのですね」
「違う、違う。そなたが口をきいてくれなんだ間も、そなたのことは愛おしく思っておったが、今はその何倍も、いや、もっと愛おしゅう思うておる」

 そうおっしゃると、今度は王様の方から口付けなさいました。

「では」
と王妃は仰いました
「では、…………その、他の………女に心をお移しになったのではないのですね」
「違う、ぜっったい、絶対違う!! そなただけじゃ!」
 
 王様は叫ぶように言うと王妃を強く抱きしめました。しばらく、抱き合っていたお二人ですが
「それで」
という王妃の言葉で身を離されました。王妃は相変わらず王と向かいあったまま、触れ合うか触れ合わぬかのところで浮いておられます。

「それで、趙公明のところで何があったのですか」
「どうして趙公明だと思うのだ」
「趙公明のところに着いてから、お手紙のご様子が変わりましたわ。それで、私酷く心配しましたのよ。」
「すまぬ」
「何がございましたの」

「超公明がな、申したのじゃ」
「何と」
「…………その、な、超公明が申すには、女は、日に何度もしたいものではないと」
「はっ?」
「女は、一回すれば十分だと、何度もすれば嫌がられると。特に、子供を産んだ女はそんなにしたがらぬ、と」
「…………」
「そなた、優しいから、言い出せなかったのではないか?」
「…………本当に、趙公明はそんなことを申したのですか」
「ああ、毎日、何度もはやり過ぎじゃとな。女たちは一回で十分、事を終えたら他の女たちに情けを与えるように勧めると」

 
 王妃は眉を寄せて暫く何かを思案していましたが
「陛下、はっきり申し上げてよろしいですか」
「ん、なんじゃ」

「……はっきり申し上げます。その男、下手、なんじゃありません?」

「は???」

「ですから、下手なのではないかと申し上げました」
「な、だって、100人を超える女と寝た男ぞ」
「100人と寝ても、女心のわからぬ男はいるということではありませんか」
「む……」
「だいたい、100人が100人とも、一回で満足するという事の方が信じられません。まして、他の女のところへ行くのを勧めるなんて、私なら考えられません」
「………」

「その男、領主の座にあぐらをかいて、女への思いやりが足りないんじゃありません? 」
「確かに、自己陶酔の強い男ではあったのう」

「少なくとも、陛下、私は、陛下と何度してもいいと思っておりますし、飽いておりません」
「そうなのか、疲れぬか。」
「疲れるも何も、私、正直申し上げて暇にしております。王子の世話は乳母達がしてくれますし、海の王国では、剣の稽古をしたり、慰問に行ったり忙しくしていたものです。ここでは……」
「そうじゃな、我が国で王妃が剣の稽古をしたり、わしの付き添いなしに外出は、ちと、難しいのう」
「でございましょう。陛下が来てくださるのが、私の楽しみなのです」
「そうか、そうか」
 そう仰りながら王妃の腰を撫でておいでです。



 さて、王様も変だなぁ、とは思っていらっしゃったのです。趙公明の申すことは、本当であろうかと。それで、お付きの者達に聞いてみたのです。
「その方、1日何回するのか」
と。
 聞かれた方はたまったものではありません。
 王より多いと言えば、恐れ多い事でしたし、あまり少なく言えば、自分の男としての沽券に関わります。
自然
「2日にいっぺんでしょうか」
「3日、空けてといったところでしょうか」
と当たり障りのない返答。

「子供を持った女は、したくないというのは本当か」
の質問は更に色んな思惑を産みました。
   
 王が王妃一筋なのは、王政が安定して良い事でしたが、できれば、自分の親戚筋の娘が見初められて、王子を産むことになれば、一族の繁栄に繋がるとの気持ちが、其々にありました。

 それ故、
「そういうこともありましょう」
とか、曖昧な答えに終始してしまいました。

 それで王様は一人煮詰まってしまったのです。

 暫く黙って、お互い触れ合っておられたお二人ですが、

「ところで、趙公明の跡取り問題はどうなりましたの」
と王妃がおっしゃいました

「それがの、全く解決しておらん。息子の一人をどうにか宥めすかして懐柔して、ようやっと分かった事には、趙公明には、年の離れた三人の妹がおる。これがどうやら、細かい采配をしておるようじや。」
「女がですか。陛下のお国で、それは大変珍しいことですね。」
「まぁ、あそこは我が国というてもはずれ、色々風習が違う。そういうても、確かに異例のことじゃ」

「どんな女達なのです」
「それがどうもようわからん。趙公明の息子も、よう口を割らなんだ。よほどの女傑で恐れらているようじゃ」
「それでは、妹達にはお会いになれなかったのですね」

「後宮に引っ込んでいて出てこぬ。それでいて的確に指示を出しているのだから恐れ入る」
「まぁ」
「わしが会いたいと言えば、会えるであろうが、わしが女に会いたいと言えば別の意味を持つ。年が離れているとはいえ、趙公明の妹じゃ、相当な年と思うが政略結婚に年は関係ない。そなたがおるのに、そんな危ない真似はできぬ」
「顧問の方々もお会いできませぬの?」
「未婚の娘が家族以外の男に会えぬ、と断って参ったわ。無理をもうさば会えたかもしれぬが、なにやら、顧問達を生贄に差し出すような気がしての。」
「確かに、無理矢理、結婚させられかねぬかもしれませんわね」
くすっと、王妃が笑いました

「そなたは、笑っておるほうが良いの」
そう言って、王は王妃の頬を撫でました。

「昨日は本当にすまなんだ」
 王が王妃の下を訪れなかったという噂は一晩のうちに宮中に知れ渡り、王は朝から、臣下の者二人から、自分の娘はどうか、と暗に進言されました。それで、我に返った王様はお昼に飛び込んできたのでした。

   
「わしの、……わしの部屋だが引き払おうと思う」
「陛下のお部屋を、ですか」
「どうせ、夜はそなたの部屋で過ごす。わしの部屋などいらぬ。下手にわしの部屋などあるから、昨夜のようなことになる」
「ですが、よろしいので」
「嫌なのか」
「嫌じゃありません。嬉しいです。でも、本当によろしいので。お一人で色々考えたい時もあるのではありませんか」

「確かに、一人で考えたい時はある。が、それをするのは、部屋ではない。ここじゃ、風呂じゃ。落ち着いて考えたい時は、風呂に入ることにしておる。湯をぬるめにさせての。今日もそうじゃ。そなたとゆっくりしたいと思うての、少しぬるめにさせた。寒くはないか、大丈夫か」
「ちょうど良いですわ。………陛下、ありがとうございます」

「なんぞ、礼を言われるようなことはしておらぬぞ」
「陛下の特別な場所に入れていただいた、ということでしょう。ありがとうございます。でも、陛下は常に誰かにかしずかれる身、お一人の時間も必要ではございませんか」

「そうじゃのう……そなたとまた、こうして一緒に風呂に入りたい。じゃが、………時に一人で入ってもいいかのう」
「もちろんですわ。陛下を信じます」

 そう言うと、王妃さまは王の目をひたと見据えました。
「陛下、私は陛下を信じます。陛下はこの広い帝国を治める方。陛下と私の間には様々なものが挟まります。私は陛下を信じます。陛下もどうか私を信じてください。何かありましたら、まず私にお尋ねなさって。そもそも、陛下にそんな疑念を浮かばせる程、私の応えは薄いものでしたか」
「いや、そうじゃな、そなたは感じてくれておった。うむ、わしはそなたを信じる。そなたの信頼を裏切らぬ男でありたい」

「はい」
 そうおっしゃいながら王妃が嬉しそうに王様に抱きつきました。
「あ、陛下、また………」
 王の硬くなったものが、王妃の秘所のあたりを撫でます

「そなたの中に入りたい」
「はい」
 王は王妃の腰を掴むと、自分の上に落としていかれます。
 すっかり収めてしまうと、王はおっしゃいました

「今宵は、そなたが動いてくれ。水の中は、そなたの方が得意であろう」
「はしたない、とお思いになりませんか」
「大丈夫じゃ、さぁ」

 王妃の体が上下にゆっくり揺れます。
 王様は、時折声を漏らされながら、王妃の腰と胸を撫でておられます。



 夜はまだまだこれから