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    朝が来て、秋の日差しが、望ちゃんの部屋の分厚い高級カーテンを通しても、差し込んできた。
 さすがに自分の部屋に帰らないと、と思った。
 身じろぎすると、望ちゃんは、すぐ起きてきた。
「朝だよ。起きれる?」
「朝か。・・・・・ああ、しばらくぶりにぐっすり寝た。夢も見なかった」
 そういいながら、僕に抱きついてくる。
 僕は、それをなんとか引きはがしながら
「もう帰らないと」
と、言った。
「そうか。・・・・帰したくないな」
「でも、帰らないと」
僕は繰り返した。

望ちゃんは、僕の顔をしばし見つめてから、
「体、大丈夫か? 今日は休むか?」
と聞いてきた。
「大丈夫、学校に行く。望ちゃんこそ、大丈夫? 今日は学校に行ける?」
「行った方がいいか」
「行った方がいいに決まっているでしょ」
「・・・・お主がそう言うなら、行ってくる」

 僕は望ちゃんの手を逃れて、ベッドから出て立ち上がった。
 我ながら、ひどい格好だと思った。上半身はくしゃくしゃになったTシャツ。下半身は望ちゃんに引きはがされて何一つ身につけていない。

 それを朝の光の中で、望ちゃんに見られているということのなんとういう恥ずかしさ。
 ベッドの脇のどこかに落ちているに違いない下着とズボンを探していると、
「シャワー・・・・」
 と、望ちゃんがつぶやいた。
「え? 何?」
「シャワー浴びていったらどうじゃ」

 僕はちょっと迷って、望ちゃんの提案に従うことにした。だって、体は汗だかなんだかわからない物でべたべたしていたからだ。僕の住む使用人棟で朝っぱらからシャワーを使うわけにはいかない。何事だって思われる。
 徹夜のせいでぼーっとする頭もすっきりするに違いない。

・ ・・・ぼーっとしているのが、徹夜のせいだけじゃわかっていたけど。


 シャワーのお湯は確かに気持ちよかった。望ちゃんに触られた感触を洗い流してくれる。
 そして・・・・その感触を惜しむ自分が同時にいた。

 その思いを否定しつつ、首を振っていたら、シャワー室のドアがいきなり開いた
 え?・・・と思うまもなく、望ちゃんが体を滑り込ませて入ってくる

 「ちょっと、望ちゃん、何・・・」
と言っている間に、キスされて、壁際に押しつけられる。
 水栓の金具が背中に当たって痛い
「望ちゃん、痛い」
そういうと、慌てたように、体が離される。その隙を逃さず、望ちゃんから逃げようと、ドアの方に向かうが、後ろから抱き込まれた。
 夕べと同じ。そう思うだけで、体の力が入らなくなるのがわかった。
 望ちゃんは、そのまま僕の背中に口づける。夕べと同じ何かが背筋を走って、立っていられなくなる。
 たいして広くもないシャワー室の壁に、僕は手をついた。
 望ちゃんは、背中をたどって口づけしながら、その唇を下に下ろしてくる。その感触に震えながら、自分が望ちゃんにお尻を突き出している格好だと認識させられて、恥ずかしさで頭がまた霞んでくる。

 「望・・・・ちゃん。何、して・・・いるの・・・」
 「ああ、見ておる。昨日、ここがわしを受け入れた。・・・・痛くないか?」
「・・・・大丈夫。大丈夫だから、・・・・見ないで」

 そんな僕の懇願もむなしく、望ちゃんはそこに舌を寄せてくる
「駄目、そんなとこ・・・・駄目」
「洗ったのであろう」
「・・・・・」
 怖くて、自分では、そこにさわれなかった。
 僕の沈黙をなんと解釈したのか、望ちゃんは、シャワーヘッドを手にとって、そこにあててくる。
 「ん・・・」
 「滲みるか?」
 「・・・・うん・・・」
 そういうと、お湯をあてるのを許してくれる。

 「・・・・望・・ちゃん。・・・もう、帰らないと・・・・支度しないと」
 「一度だけ、な」
 そういうと望ちゃんは立ち上がって、僕の前に手を伸ばして握りこんできた。
 「な!・・・・望ちゃん、駄目」
望ちゃんの硬くなったものが当たってくる。
「もう、入れない。入れないから、な」
 そういうと、僕の足の間に、自分の物を入れてきた。
 僕のものを追い立てながら、望ちゃんのものが足の間で前後する。足の付け根に当たって、その硬さを主張してくる。

 僕が達するのと、望ちゃんのものが僕の足に強くすりつけられて達するのは同時だった。
 「ああ、一緒だったな」
望ちゃんが、満足そうに、僕の耳元に囁く。

 その後は、ぼーっとした頭のまま、望ちゃんにもう一度体を洗われて、手を引かれてシャワー室から出た。

 タオルを渡されて、ようやく意識がはっきりしてくる。

 「これを着ていったらどうじゃ」
望ちゃんが、望ちゃんの服を手に取りながら、言ってくる。確かに、昨日きていたよれよれのTシャツはもう着たくない。
 でも、ここで理性が戻ってきた。

 そんな望ちゃんの服を着て朝帰りの僕を見て、みんなはどう思うか。そろそろみんな起きてくる頃だ。第一ここで脱ぎ捨てた服はどうするんだ。望ちゃんの服は、メイドに回収されて洗濯行きだ。そこに紛れた僕の服をどう説明する? 自分の服を抱えて歩くのか?それこそ言い訳はどうする。

 「・・・いい。自分の服で帰る」
 僕が自分の服を着る間、望ちゃんは裸のまま、椅子に腰掛けてこっちを見ている。頼むから何か着て欲しい。
 望ちゃんに背中を見せて着替えるというわずかばかりの抵抗をしていると、声がかかった

 「学校に行くのじゃな」
「行くよ。望ちゃんも行ってね」
「今日は、体育はないのか」
「・・・ないよ。なんで?」
「ならいい。学校で脱ぐなよ。背中にわしのつけた痕がついているぞ」

 はっと、して振り返ると、
「そんな顔をしても、もう、どうにもならん。」

 どうにもならない。そうだ、夕べのこと自体、もうどうにもならない事実だ。

「母さんに」
と言って、話題を変えた。
「母さんに朝食を用意してもらうね。食べられる?」
「お主も一緒なら」
「・・・僕はいらない」
「じゃあ、わしもいらぬ」

 昨日は特別だ。また、そんなマネできない。
 僕が黙っていると
「図書室で、簡単なもので、給仕なしで、ならどうじゃ」
 無理。できない、と思った。
 続けて黙っていると
「なら、食べぬ。学校も行かぬ」
 卑怯だと思った。望ちゃんは、こういう駆け引きが上手すぎる。

「・・・本当に、食べるんだね。学校も行くね?」
「ああ、お主が一緒に食べてくれるならな」

「・・・・・図書室で待っていて」

 そう言い残すと、僕は望ちゃんの部屋を出た。
 
 幸い、誰にも会わず、本棟と使用人棟をつなぐ扉まで来ることができた。後は、この扉を抜けてすぐの階段を昇れば、僕の部屋だ。父さんと母さんは、もう、本棟で仕事に取りかかっているに違いない。ここまで会わなければ、もう大丈夫。

 そう思って、扉を開けた。

 甘かった。

 そこに、父さんが座っていた。
 本棟と使用人棟とをつなぐ扉の前、使用人側に父さんが椅子を持ってきて座っていた。
 一晩中、起きていたのだろう。目が充血している。いつもパリッとしたお仕着せをきているのに、それがよれている。
 
 僕の頭に最初に浮かんだことは、自分の服で良かったってことだ。

「・・・おはよう」
僕は父さんに声をかけた。父さんは黙っている。
「おはよう」
重ねて声をかけた。父さんは黙ったままだ。

「ご飯、用意して。図書室で食べるって、何か簡単なものでいいって」
父さんは、まだ沈黙したままだ。
「・・・・・僕の分もお願い。一緒に食べるから」
なるべく、冷静に言ったつもりだ。

「大丈夫か?」
 ようやく父さんが声を出した。

「望様なら大丈夫」
 僕は、努めて明るい声を出した。そして、続ける
「学校も行くって。僕も学校行くから支度しなくちゃ」

 そう言って、父さんの脇をすり抜けた。




 その日の授業は、全く耳に入らなかった。寝ていないから、眠気が襲ってくるし、そうじゃないときは、体中、望ちゃんが触れた感触が甦ってきてどうにも落ち着かなかった。
 そう体中。特に望ちゃんを受け入れた感触は中々去ってくれなかった。

 放課後はちょっと用をこなして、夕食ぎりぎりに帰った。

 帰ってみると、もう、望ちゃんに依って、全て手配されていて、その日も僕らは図書室でご飯を食べた。
 トレーに、おかずが何品かとご飯とお味噌汁がのった夕食で、まるで小学校の給食のようだった。
 望ちゃんが、正に
「給食のようなので頼む。給仕はいらん」
と言ったと知ったのは大分後だ。

 その後、図書室で僕らは勉強した。僕が、勉強すると主張したからだ。高校3年の秋。受験勉強に追い込みをかけなきゃいけない時期だった。

 老子に子供の頃から教えを受けていた僕らは、結構成績優秀だった。
 望ちゃんは、得意は文系科目で、進路もそちらに行くつもりだった。行く予定はT大。国内最高学府と言われるところだ。
 法学部にするか、経済学部にするか、旦那様と相談しているところだった。財閥の跡取りとしては経済学部がいい気もするが、法学部に行って、将来の官僚や大臣と知己を得ておくのもいいかと迷っていた。

 僕は、そもそも大学に進学するかどうかを迷っていた。お屋敷で働くなら別に大学に行く必要はない。そんな僕を後押ししたのは、望ちゃんと老子だ。 
 老子は言った。
「別に、大学に行かなくても人生は豊かだと思うよ。でも、勉強はできるときにしておいた方がいい。大学に行かなくても学ぶことはできるけど、大学に行った方が手っ取り早いよ。」
望ちゃんは
「そうだ、そうだ。お主せっかく頭が良いんだから。もっと学びたいだろう。わし、知っているぞ、物理が大好きだって」
 確かに、まだ知らない知識に触れてみたかった。お屋敷で働くにしても、秘書になるにしても、学生時代くらい好きな学問をしてみたい気持ちがあった。
 父さんも、公立なら言っていいと言ってくれた。
 学校の進路指導と、老子のアドバイスを得て、僕は望ちゃんと同じ大学の物理学部を目指すことにした。

 
 が、それも昨日までの事。

 僕は進路を変えることにした。
 医学部に行くことにした。それなら、望ちゃんとは関係ない世界で生きていくことができる。
 物理を勉強しても、それを続けていくのは難しい。就職するにしても、崑崙財閥と全く無縁の職業なんて、この国では限られている。
 医者なら、日本全国どこでも働くことができる、と僕は考えた。なんなら、世界のどこでもだ。
 老子の教えの賜物で、幸い英語は得意だ。中国語もできる。

 医者なら、社会的地位もある程度ある。家を離れても両親にかける心配は少ないはずだ。

 問題は望ちゃんだった。
 望ちゃんが納得するはずがないって、わかっていた。
 僕に望ちゃんが説得できるとは思えなかった。


 その夜だって、望ちゃんに手を取られると、僕は吸い込まれるように、望ちゃんの部屋に付いていった。

 部屋に入って、ベッドの近くまで来ると、望ちゃんは昨日と同じくキスをしてきた。
 僕は、応えることもできなかったが、抵抗もしなかった。

 昨日と同じ展開になるのかと思ったら、望ちゃんは僕のズボンの前を開け始める。
 そして下着をおろしてして僕のものをあらわにすると、口を寄せてきた。

 え? と思うまもなく、含まれる

 ズボンも下着も、足に掛かったまま。望ちゃんが僕の前にかがんでいた。
 「・・・・ちょっ・・・や」
 吸ったり、舐めたり。
 
 僕のものはすぐに立ち上がった。

 「ん、・・・駄目、待って・・・」
 望ちゃんを引きはがそうと、その髪の毛に手を入れたが、力が入らず、引きはがせない。むしろ、押しつけているかのようだ。

 「や・・・」
 僕が声をあげると、そこに歯が軽く当てられ、その感触に背中がのけぞる。さらに激しく吸われて、僕はこらえられず達した。

 立っていられず、ベッドに座り込む。
 望ちゃんは、そのまま僕に吸い付いてきて、僕が出したものを口に含んでいる。
 「何・・・しているの、望ちゃん」
 望ちゃんは、答えない。望ちゃんの喉がゴクリと鳴って、まだ出ている僕のものを、飲み込んでいるのがわかる。

 すっかり飲みきって、望ちゃんが顔をあげた。その満足そうな顔。してやったり、よく見せるあの顔だった。

 「望ちゃん・・・・飲んじゃったの・・・」
 「ああ、美味かった。・・・お主の味はこんなだったんだな」
 
 そして、また、僕のものを軽く舐めながら
「ずっと、味わってみたかった。そうか、こんな味か」
と言った。

 自分の顔が赤くなるのがわかる。

 そこからは昨日と同じだった。昨日と違うのは、お互い服をぬいだことくらいだった。僕ももう抵抗しなかった。


 翌朝は土曜日で、学校は休みだったけれど、朝早く、使用人棟に戻った。
 朝ご飯を、図書室で一緒に食べていると、老子先生がやってきた。

 「さぁ、そろそろ勉強してもいい頃なんじゃない」
といいながら。

 実は、僕は、昨日、老子に学校の公衆電話から連絡していた。
 老子は、あくまで望ちゃんの家庭教師だったけど、僕にもきちんと勉強を教えてくれて、なにかあったら、ここに連絡して、と連絡先も教えてくれていた。
 学校の電話だったので、まわりにわからないように中国語で話した。
 話した内容は、進路を医学部に変えるので、勉強を見て欲しいってこと。望ちゃんには内緒にして欲しいってこと。
 この二つだけだった。
 電話の向こうで老子は、しばらく黙っていたけど
「それで良いんだね。・・・・わかった。協力してあげる」
そう言ってくれた。

 放課後、進路指導室にも行って、進路変更を伝えた。進路指導の先生は喜んで、いろんな資料を出してくれた。
 

 その日から、土日はびっしり老子が受験指導。望ちゃんにばれないよう医学部の受験問題をまぜて指導してくれた。
 平日は、放課後、学校の自習室で、望ちゃんの前では広げられない科目の過去問を解きまくる日々。家に帰ってからは、お屋敷の図書室で英語やその他、望ちゃんと勉強してもさわりない科目に集中した。
 
 そして、・・・・・夜は望ちゃんの部屋で過ごした。


 
 僕が狙うことにしたのは、もともと狙っていた国立大学の医学部だ。もちろん、狙う学部が、この国で最難関の理系の学部だってことはわかっていた。
 でも、都内で、ここのうちから通える大学で国公立の医学部というと、そこしかない。学費の関係で私立は論外だ。
 
 父さんにも、許可を得た。だって学費を出してくれるのは父さんたちだからだ。
 父さんは、最初、医学部と聞いて、びっくりしていた。国立だから、他の学部と学費は同じで、二年長いだけと聞いて、それならなんとかなると言ってくれた。

 そして、最後に言った
 「普賢、私と母さんは、このお屋敷を離れようと思う」
「え?」
「母さんと話した。おまえも一緒に出よう」
「なんで?」
「なんでって、おまえ、つらいんじゃないか?」

 父さんはわかっているって気づいた。いや、お屋敷中の者が知っているはずだ。だって、僕は朝帰りを何度か見つかっているし、望ちゃんの部屋の寝乱れたベッドをみれば、何が起こっているかなんて明らかだ。
 でも、みんな何も言わなかった。酔いつぶれて、学校にも行かない主の姿をみれば、それより今の状態はずっとましだからだろう。

 だけど、父さん達は僕を心配してくれていた。父さんなんて代々執事としてこの家に仕えてきた人で、この家以外の事なんて知らない。そんな人が屋敷を離れるなんて、ものすごい決断だ

「僕はつらくないよ。何のこと? だいたいこの家を離れて、父さんどうするのさ」
 執事なんて、このご時世雇ってくれる家なんてあるわけない。まして紹介状も無しなんて。
「母さんの料理の腕があればなんとかなる。住み込みで会社の寮とかに雇ってもらうとか、なんとかなる。だから心配するな」
 お屋敷で少人数の料理を作るのと、安い食材で大量に作るのでは全然違うことのはずだ。

「・・・・父さんと母さんがいなくなったら、望様が困るよ」
「だって、おまえ」
「望様を一人にしておけない。」

 そういうこと。 
 だから、都内の国立に絞った。地方の国公立の医学部という手もあったが、それを僕は除外した

 望ちゃんを一人にしておけない。
 今は駄目だ。

 そう、今は。

 もっと、時間が経てばきっと・・・・・


 僕は父さんとのやりとりで最後までシラをきり通した。父さんが具体的なことに踏み込んで来ないのをいいことに、最後まで何をいっているのかわからないふりをした。

 
 

 望ちゃんは、僕と老子が何か企んでいるのに気づいていた。そりゃそうだろう。それまでおざなりの受験勉強しかしていなかった僕が猛然と受験勉強し始めたんだから。もともとの学部なら楽勝と学校の進路指導にも言われていて、僕はそんなに受験勉強に身を入れていなかった。

 そもそも、望ちゃんに嘘はつうじない。
 でも、望ちゃんは相手が、何か企んでいるとはわかっても、それが何かって事までは具体的にわからない。長いつきあいでそれを僕らはわかっていた。
 だから、望ちゃんには黙っているという戦法をとった。


 望ちゃんは、疑いをいだきつつ、僕が、おとなしく望ちゃんの部屋についていくからか、それ以上の追求をしなかった。

 望ちゃんは、僕を抱いて、朝までぐっすりだ。最初眠れなかった僕も、次第に望ちゃんの隣で寝ることに慣れていった。朝、寝坊することもたびたびで、ついに目覚ましをかけることを望ちゃんに了承させた。

 望ちゃんは、事を終えると、すぐにぐっすりって、ことがほとんどだったけど、時には起きていて
 「ずっと、こうしたかった」
とか
「初めてはな、本当は、大学生になってからと思っていた。バイトでもしてな、自分の稼いだ金でホテルでもとって、こう、もっとロマンチックにするつもりじゃった」
とか言った。
「シャワーもな、お主とこうしたいと思ってな。それならやっぱり部屋にシャワーがないと、と思ってつけさせた」
「ずっと、お主をおかずにしていた」
なんて、ことまで言った。
 僕はそれに答えず、全て黙殺した。どう返せばいいというのだ。


 振り返ってみれば、望ちゃんは思春期のなり始め、僕を質問攻めにして困らせた。
「どうじゃ、毛は生えたか」
とか、
「勃つようになったか」
「夢精の中身はなんじゃ」
とか、僕を赤面とさせた。
 プライバシーの侵害だよ、と、困り切った顔で答えたのを覚えている。





春が来て、僕たちは無事合格した。
 望ちゃんが、僕の医学部合格を知ったのはその時だったが、後の祭りだ

 「どうして、医学部なんじゃ!」
 「どうしてって、お医者さんになりたいからだよ」
 「お主、物理の勉強がしたかったのじゃないのか」
「気持ちが変わったんだ。もっと直接的に人の役にたちたいからだよ。」
 用意していたもっともらしい台詞をいった。

 望ちゃんは、不満たらたらだったが、どうしようもない。 
 僕たちは、一緒に大学に通い始めた。学部は違ったが、教養部のころは、同じキャンパスだ。
 崑崙財閥の跡取りが、電車通学というのもどうかと思ったが、
「高校までも、電車通学だったのじゃ、なんの問題もない」
と、崑崙財閥からの運転手の派遣を望ちゃんは退けた。

 学生生活は何の問題も無く過ぎていった。
 通学中や、食事の間のたわいもない話から、望ちゃんが大学生活を楽しんでいるのがわかった。高校時代からの友人の姫発さんは、同じ学部で、姫発さんが企画するいろんな学生行事に関わっているらしかった。