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 旦那様と奥様が亡くなった。


望たちが高校三年の秋の事だった


 交通事故だった。
 パーティーに行くためにお二人が乗って信号待ちしていた車に、無謀運転の車が突っ込んだのだ。お二人は即死だった。運転していた四不パパも大けがだった。

 良家の夫婦が死んだことで、世間は最初いろいろ噂したが、どう検証しても、お二人に非がないことがわかって、やがて沈静化した。

 検死の後、慌ただしく、そして盛大に葬儀が執り行われた。望ちゃんは喪主を務めていたが、葬儀は崑崙財閥主導で望ちゃんはレールに乗っかっているだけだった。
 無表情に弔問客に機械的に答えるだけ。
 心配だったけど、親戚筋のいろんな人がそばにいて、近寄れない。
 僕は、僕で、執事の息子として、父さんに言われて、いたらないながらも葬儀や御屋敷の雑用や受付をこなしていた。

なんとか、隙をみて、望ちゃんの側に行き
「望様、大丈夫ですか。少し休みませんか」
と周りの大人に気を遣いながら言うのがやっとだった。

 その時、望ちゃんは顔を上げて僕を見た。僕をみて泣きそうな顔になったと思った、が出てきた台詞は
 「大丈夫じゃ、お主こそ無理をせぬようにな」
という大人びたものだった。

 葬儀が終わってしばらくしてもお屋敷には、親戚筋の方が滞在され、望ちゃんに目を配っていた。とくにおばさんの雲霄様は、望ちゃんのために会社を休んで、世話をしていた。

 望ちゃんもずっと学校を休んでいた。
 心配だったけど、
「おまえまで休んでも仕方ない、雲霄様もいらっしゃる。おまえはちゃんと学校にいけ」、
 と父さんに言われて、仕方なく僕は学校に行っていたが、心ここにあらずで、授業に全く身が入らなかった。
 家では雲霄様がずっと側に居て、僕の割り込む隙は無かった。

 
 望ちゃんの異変は、雲霄様がお屋敷を離れてからだった。望ちゃんが学校に行くようになり、もう大丈夫と、望ちゃんに説得されて雲霄様はお屋敷を離れてお仕事に戻られた。その後だった。

 望ちゃんは、再び、学校を休み始めた
「崑崙の者たちにいうなよ」
と、僕の父さんにはきつく言った。大分前から、次代の当主として、望ちゃんに心酔していた父さんはどうすべきか迷ったが、結局、主である望ちゃんの命に従った。父さんに言わせれば、おまえに親切にしすぎる以外、欠点は無い方だというのだ。
 
 そして、望ちゃんは、酒に溺れた。

 最初、僕はその事態を知らなかった。父さんと母さんは話してくれなかった。なじみのメイドさん達もみな、疲れ切っていてお話しどころじゃなかった。
 僕は結局ただの使用人の息子だ。望ちゃんに呼ばれなければ、お屋敷の本棟にいく理由がない。
 望ちゃんのことは心配だったが、父さんに、
「望様には、雲霄様たち皆様が付いていらっしゃる。おまえの出る幕じゃない。おまえは学校に行け」
と、重ねて言われていた。

 ある日学校から帰ってくると、メイドさんの一人が、使用人棟にいた。
「こんな時間に休憩ですか? お疲れ様です」
 疲れた顔のメイドさんに声をかけた
「あ、普賢君」
 メイドさんは何か考え込む顔になって、かなり、躊躇いながら、僕に話し始めた。望ちゃんがもう3日学校にいっていないってこと。部屋に籠もっていて、昨日は夕飯にも出てこなかったこと。今日も朝食も昼食にも出てこない、と。
 父さんが、ドアの外から呼びかけるけど、昨日までは
「かまうな」
と返事があったが、今日は返事すら無いと。
 メイドさんは
「普賢君、あたし達、もうどうしたらいいのかわかんない。ねぇ、普賢君から、望様に出てきて下さるように言ってくれない?」
と、言った。
 

 その話を聞いて、僕は後先考えず、本棟に入っていった。まっすぐ望ちゃんの部屋を目指す。

 望ちゃんの部屋には、もう何年も行っていない。
 
 子供の頃は、自由に出入りしていた望ちゃんの部屋だったが、大きくなってからは、望ちゃんの部屋に入るのは、主従の別を超えていると感じていたからだ。望ちゃんの部屋に再び入るのは、大人になって、使用人としてちゃんと仕える様になってからだと思っていた。
 ああ、どこで勉強していたのかって? 老子との授業や自習は、図書室を使っていた。

 望ちゃんの部屋まで来た僕は、そのいきおいのまま望ちゃんの部屋のドアをノックした

「望様、起きていらっしゃいますか。大丈夫ですか」
返事が無い
「望様、望様、大丈夫ですか」
大声を出して、激しく、ドアをノックした。

 何度も呼んで、何度もノックして、ようやく望ちゃんは出てきた。
「普賢・・・・」
 ひどい有様だった。望ちゃんがこんなになっているのに、僕はのうのうと学校にいっていたのかと、激しく後悔した。

 顔色が悪い。目の下に深いクマができていた。髪も寝乱れていて、そして、何より吐く息がくさかった。
 僕には、その時わからなかったが、あれは酒臭いというのだと、後で知った。
「望様、大丈夫ですか」
「・・・・大丈夫じゃ・・・・。ああ、頭が痛い。」
「薬、薬持ってきましょうか」
「・・・・いや、いい。・・・・そうだ、水、冷たい水が飲みたい」
「持ってきますね」

 僕は、台所に走って行って、母さんから水を受け取った。戻る途中で、父さんに会った。本棟にいる僕に父さんは何か言おうとしたが、それを制して望ちゃんの様子を説明した。
 父さんは何か考えていたが、とにかく水を持って行くよう僕を促した。

 
「水を持ってきました」
 そう言って部屋の中に入っていった。
「うむ」
そういうと、望ちゃんは水を飲み干して、また、ベッドに突っ伏して倒れ込んだ。望ちゃんの部屋はカーテンが閉め切られ薄暗かった。
 僕は、
「大丈夫ですか?」
と言ったが、望ちゃんが返事をしてこないので、後の言葉が続けられなかった。
 実際、僕は望ちゃんにかける言葉が無かった。望ちゃんが両親を亡くして悲しんでいるのはもちろんわかっていた。だが、言葉が無い。旦那様と奥様が亡くなって僕も悲しいが、両親を亡くした望ちゃんの気持ちとはもちろん違う。
 両親が生きている僕が何を言っても、望ちゃんにとっては的外れな言葉だろう。それどころか傷つけるかもしれない。怖くて僕は望ちゃんに、旦那様と奥様が亡くなって以来、言葉らしい言葉がかけられなかった。

 ただただ心配していただけで、何もできなかった。
 この時も、ただ望ちゃんの部屋の中で立ち尽くしていただけだった。


 そして、ずっと立ち尽くして、ついに僕は、声を再びかけることにした。

「望・・・・ちゃん。大丈夫?」
 
 父さんには禁じられた呼び名だ。望様はもうこの家の当主なんだから、と。
 父さんも母さんも、そして、たぶんお屋敷の者はみんな知っていた。僕が、望ちゃんのことを、相も変わらず望ちゃんと呼んでいることを。

 そう、僕は言いつけを破って望ちゃんに話しかけた。


 望ちゃんの背中が揺れた。
「望ちゃん、大丈夫? お水もっと持ってこようか?」


「いや・・・・いい。・・・・・わかっておる。・・・・わかっておる、甘えているって事は」
僕は、黙って次の言葉を待った。
「世の中には二親がいなくて困っている子供が大勢おる。わしのように助けてくれる親戚もいない。わしなんぞ、親が亡くなっても、家もあれば、学校も続けられる。こんなの、ただの甘えじゃ。」

 僕はしばらく考えてから、言葉を紡いだ。
「望ちゃんは甘えていないでしょう。むしろ一人で耐えているじゃない」

 そこへ、ドアをノックする音が聞こえた。望ちゃんが返事をしないので、僕が代わりに出た。父さんだった。
 「望様は、中か?」
と聞いてきた。うん、と返事をすると、父さんは望ちゃんの許しも得ずに中に入ってきた。僕はびっくりした。主に逆らう父さんは初めて見た。

 「望様、お酒を飲みましたね」
僕から、望ちゃんの息が臭うときいた父さんは、さすが大人だ。酒だとすぐに思い至ったらしい。調べると旦那様の応接室の酒瓶は全て空になっていて、空き瓶が偽装工作として、きれいに元の場所に並べられていた。
 母さんにも声がかけられて、台所の料理用のワインや日本酒も全て空なことが判明した。

 「望様、お気持ちはわかりますが、いくら何でも飲み過ぎです」
「そうか。たいして酔えんかったぞ。あれだけ飲んでようやくちょいと眠くなった程度じゃ」
「とにかく、あんなに飲んではお体に毒です」

「望ちゃん、つまり、二日酔いってわけ?」
 僕はようやく、望ちゃんの頭痛の原因について思い至った。これが世に聞く、二日酔いってやつかと。
 僕が、望ちゃんを望ちゃんと呼んだことに、父さんは気づかなかったみたいだ。この時は、それだけ望ちゃんの事を心配していたんだと思う。

「とにかく、起きて、なにか召し上がって下さい」
「食べたくない。食欲がない」
「それでも、なにか召し上がらないと。家内になにか消化のいいもの作らせますから」
「・・・・食べたくないんじゃ」
「ですが!」


 僕も父さんに重ねて言った。
「何か食べて、望ちゃん。母さんにおいしい物作ってもらうから、ね」

望ちゃんは、ゆっくりと身を起こすと
「普賢が一緒に食べてくれるなら、食べる」

「え?」
って、僕と父さんの声が重なった。

「一人で食べるのは嫌じゃ。父上と母上がいないことを思い知らされる。普賢が一緒に食べてくれるなら食べる。それと食堂は嫌じゃ。台所でもよい。どこか他の場所にしてくれ」
「それなら、雲霄様を呼びましょう。ご連絡すればいらしてくださるはずです」
「雲霄叔母上は忙しい。連絡しても今日は来れんだろう」
確かに正論だったが、話に聞く雲霄様の溺愛ぶりを聞くと来るんじゃないかって気もした。

 しばらく、僕と父さんは顔を見合わせていたが、
「わかりました。そうすれば食べて下さるんですね」
と、父さんが折れた。父さんも望ちゃんの顔色のあまりの悪さに思うところがあったのだろう。

 僕と望ちゃんを残して、父さんは部屋を出て行った。

「・・・そんなに飲んだの?」
僕は話題に困ってそんな事を聞いた。
「父上の応接室の酒は全て空けた」

 旦那様の応接室に僕は入ったのは、遠い幼い日々だ。まだ何もわかっていなかった頃。きれいなガラスのボトルが何本も並んでいて、「これは、酒っていって、大人の飲み物なんだ」
なんて、望ちゃんが説明するのをふーん、と感心して聞いていた。

 あの頃の記憶が確かなら、望ちゃんは相当な量を飲んだはずだ。母さんの料理用のお酒もあけたらしい。

 「たいして酔えなかった」
と、さっきと同じ答えが返ってきた。望ちゃんが後で語ったところによると、わし、酒に強いらしい、ということだった
「でも、体によくないよ」
僕は、さっきの父さんと同じような台詞しか言えなかった。

「・・・わしの部屋に普賢が来てくれたのは、久しぶりじゃのう。中学に入ってからは一度も来てくれなかった」
 望ちゃんも、僕が望ちゃんの部屋を避けていたことにはきづいていたらしい。
「うん」
 しばらくぶりに入る望ちゃんの部屋は、覚えていたほどには広くなかったが、それでも十分な広さがあった。広いベッドと机。ソファーもあった。トイレもあって、それで望ちゃんは籠城を決め込んでいられたのだ。さらに、奥には望ちゃん専用のクローゼット部屋が続いていた。幼い頃は、あそこに潜り込んで、蝉玉さんから隠れて、いろんなごっこ遊びをして楽しんだものだ。

 クローゼットの反対側には、記憶の中には無かった扉があった。中学生の頃、望ちゃんが主張してつけさせたシャワー室と洗面台に違いない。もう子供じゃ無いから、好きなときに部屋でシャワーを浴びたい、と言ってつけさせたのだ。そんな事を言っておきながら、湯船に入るのが好きで、結局、あまり使っていないらしいと、父さんから聞いていた。

「あのクローゼットでよく遊んだのう」
望ちゃんも同じようなことを思っていたらしい、とそれで知れた。

 たあいもない子供の頃の思い出を語っているうちに、父さんが僕たちを呼びに来た。

 遅い昼食は、図書室に用意された。望ちゃんは台所でと言ったけど、それはさすがに却下だった。
 それで、旦那様と奥様の思い出が少ないところ、というと、僕たちのいつもの勉強部屋、図書室しか思いつかなかったらしい。僕にしても、他にどこがいいかと言われると思いつかない。父さん達の判断は妥当だったのだろう。

 図書室の勉強机の上に、スープがのっていた。野菜やキノコやなにかたくさん入った母さんらしい優しい味のスープだった。二日酔いと聞いた母さんは、凝った料理は辞めてスープ一つに絞ったらしい。

 「こんな時でも腹は空くし、美味い物は美味いな」
そう言いながら、望ちゃんは、ゆっくりスープを飲んでいた。
 父さんは給仕すると言ったが、望ちゃんは断った。
「スープだけなら、給仕はいらん。下がっていい」
 僕たちは、スープ鍋から、自分ですくいながら食べた。

 食べ終わると、望ちゃんは、囲碁をしようと言ってきた。
 望ちゃんは、囲碁、将棋、チェス、そういったものは何でもござれだった。僕と望ちゃんの間には、相当な実力差があって、幼い日に既に勝負にならなくなっていた。望ちゃんの相手はもう老子かプロで無ければつとまらなくなっていた。

 だから、勝負は大分ハンデをつけて行われた。それでようやく五分だった。
 囲碁に飽きると、次は将棋。次はチェスと。

 夕食として、これまた胃に優しい雑炊が、図書室に届けられ、それを食べながら、勝負は続けられた。
 
 途中父さんが食器を下げにやってきた。心配そうに僕と望ちゃんを交互に見る。後は任せて、と目で合図した。それでも心配した顔をしながら、父さんはようやく出て行った。

 夜中すぎても、勝負は続いた。
 
 望ちゃんは疲れ切った顔だったが、あともう一局としつこかった。

 ついに僕は言った。
「望ちゃん、もう寝ないと」

 しばらくの沈黙の後
「眠れない」
と望ちゃんは言った。
「寝れば、夢で父上と母上に会えるかと思うて寝ようとする、が眠れない。寝たら寝たで、見るのは悪い夢ばかりじゃ。目が覚めると、今度は、父上と母上がいないことを思い知らされる。わしは一人じゃ」

 今度こそ僕は、言葉を失った。
 みんな居るよ、心配しているよ、そう言いたかったが、そんな月並みな言葉は、かけられなかった。

 それで、迷ったが立ち上がると、意を決して、チェス盤を超えて、望ちゃんを抱きしめた。
「一人じゃ無いよ」
 僕には、それ以上の意図はなかった。

 たぶん無かった。ただ抱きしめたかっただけだ。

 望ちゃんは、しばらくそのまま動かなかったが
「そばにいてくれるか」
と言ってきた
「うん」
「一人にしないでくれるか」
「うん」

「一人じゃ眠れない」
「寝るまでそばにいるよ」


 どうやって、抱擁が終わったのか覚えていない。
 気がついたら、望ちゃんに手を引かれて、望ちゃんの部屋に向かっていた。何か間違っている。頭のどこかが警告していたけれど、望ちゃんに触れられた指先から、痺れるような感触がして、頭のどこかが麻痺していた。

 望ちゃんの部屋に入るときにも警報音は頭の中に響いていたけど、痺れた頭の僕はそれを無視した。
 望ちゃんはまっすぐベッドに向かっていた。

 僕はベッドの側に椅子を寄せた。それに座って望ちゃんが眠るまで手を握っているつもりだった。

 望ちゃんの思惑は違った。ベッドまで来ると、僕の手を引っ張って僕をベッドに座らせた。

 そうして、え、と思うまもなく、望ちゃんの顔が近づいてきて口づけられた。
 いけない、そう思ったときには、もう舌が唇を割って入れられていた。望ちゃんの舌が、僕の口の中をまさぐる。
 重ねて、いけない、と思って、望ちゃんを引きはがそうとしたが、力がはいらない。たぶん、歯で舌を噛んでやれば、この口の中を探る物体は出て行く、頭ではわかっていたが、実行できなかった。
 
 頭が痺れる。
 麻痺する。

 そのまま、望ちゃんは、ベットに僕を押し倒し、僕のTシャツをまくりあげ始めた。
 逃げなきゃ、と思った、望ちゃんにこんな事させちゃいけない。

 体を反転させて、望ちゃんから離れようとした。
 うつぶせになった僕に、望ちゃんが後ろからのしかかってくる。
 四つん這いになって、逃げようとするが、望ちゃんは僕のズボンを脱がし始めた。
 
 同じ男同士だ。後ろから、手を回せば、自分のズボンを下げるのと同じ動作で、手慣れたものだ。あっという間に下着も下げられた。

 その間も僕は、もがいていた。
 僕たちの間にそれほどの体格差は無い、むしろ僕の方がちょっと背が高いくらいだった。だから、本気で逃げようと思えば、逃げられたはずだ。

 でも、できなかった。
 望ちゃんに触られたところから、体が痺れて力が入らない。

 さらに、望ちゃん手が僕の前に触れてからは、いっそう力が入らなくなった。
 望ちゃんは、僕の前に触れると
「ああ、」
と、陶酔したような声を出した。望ちゃんがどんな表情だったかはわからないまま、背中越しにその声を聞いて、僕の頭はますます痺れた。

 そして、手慣れた手つきで、僕のものをしごき始めた。巧みな手つきだった。それはそうだ。自分が気持ち良いようにすればいいんだから。
 僕はすぐに絶頂に追い詰められた。

 その僕の放った物を手ですくい取って、望ちゃんは、それを僕の後ろに塗り込め始めた。
 駄目だと思うのに、望ちゃんの指を拒めない。Tシャツをまくり上げられて、背中にキスされると、背筋に電流が走って、体の力がますます抜ける。その隙を突いて、望ちゃんの指が入ってくる。

 その間も望ちゃんは、僕の前を扱くのを止めなかった。

 「あ、あ、んん」
 自分でも出している声が、自分の物だって信じられないくらい、出した事の無い声だった。
 僕の声が漏れるたび、望ちゃんの手はますます猥らに僕の前を煽る。
 僕をもう一度絶頂に追いやってから、望ちゃん自身のものが僕の中に入ってきた。
 「だ、駄目、そんな事しちゃ、駄目」
そう言いながらも、体に力は入らず、望ちゃんの物を受け入れていく、その異物感にあえぎながらも、拒めない。

 望ちゃんは
「そばにいると言うた」 
そう言いながら、僕の前を嬲る手も緩めず、僕の中に入ってくる。
 そういう意味じゃ無かった、そう言いたかったが言えず、僕は吐息を漏らすだけだった。
 
「ああ、全部収まった」
望ちゃんは、そう宣言すると、動き始めた。
「はぁ、はぁ」
という息が僕の耳元で響いた。
 僕のものを手で煽りながら、何度も抜き差しする。

 僕は三たび、望ちゃんの手によって、絶頂に追い上げられた。
 そして、望ちゃんのものを締め上げるのが、自分でもわかった。
 望ちゃんが
「ああ」
と、気持ちよさそうに喘ぎながら、僕の中ではじけた。

 その後も、望ちゃんは僕の中から出ていかず、僕の前を更に嬲り始めた。
「望ちゃん、もう、・・・・・無理」
「もう一度だけ、な、もう一度だけ」

 そう言って、望ちゃんは僕のものを撫でてくる。
 望ちゃんのものが後ろで固くなるのを感じた。いけない、駄目だと思いながら、僕のものは熱くなってくる。
 望ちゃんを振り払えない。

 もう一度、今度は望ちゃんのものがはじけた後で、いかせてもらえた。それで望ちゃんはようやく許してくれて、僕の中から出て行った。



 その後、望ちゃんは気持ちよさそうに寝てしまった。寝息も穏やかだ。
 僕は、動けなかった。望ちゃんが僕を抱きしめて寝ていたからだ。
 この部屋から出なきゃ、望ちゃんから離れなきゃと、思いながらできないでいた。僕が出て行く気配が伝わると、望ちゃんはすぐに僕を強く抱きしめてきた。
 望ちゃんの眠りを覚まさないために、僕は動けないでいた。

 いっそ、僕も寝てしまえたら楽だったが、そうもいかなかった。


 僕の頭は、後悔でいっぱいだった。
 なんてことをしちゃったんだろうと思っていた。


 望ちゃんとは、ずっと一緒にいたいって思っていた。
 でも、こんな形じゃ無かった。

 執事になって望ちゃんに仕えるのでも、秘書になるのでも良かった。望ちゃんをずっと支えていけたらって思っていた。
 そして、それぞれ結婚して、子供が生まれて、その子供達も僕たちのように仲良くしてもらえたらいい、そう漠然と思っていた。
 もう、その夢は叶わない。

 一度でも、こんなことして、どんな顔をして、望ちゃんとその奥さんの前に立てというのか。
 できない。そんなことできない。

 だいたい、望ちゃんは、僕とこんなことしていい人じゃない。
 崑崙財閥の跡取りとして、しかるべき地位につく人だ。望ちゃんの肩には、多くの人の人生がかかっている。

 何とかしなきゃ。何か考えなきゃ。
 僕は一晩中考え続けた。