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 望ちゃんと僕は幼なじみだ。
 少なくとも望ちゃんはそう主張している。

 幼なじみと言っても、家が近かったとか、幼稚園が一緒だった、ということではない。
 いや、家は近かったか。近すぎるほどだった。

 望ちゃんはかなりいい家の一人息子で、僕はその家の住み込みの使用人夫婦の息子。
 そういう間柄だ。

 僕と望ちゃんは同じ年に生まれた。
 僕の母さんは、僕を保育園とかに預けて引き続き働くつもりだったが、預け先が見つからなかった。
 そこへ、奥様、望ちゃんのお母さんだ、が助け船を出した。うちの子と一緒に面倒みるわよ、と。

 僕の母さんは、かなり腕のいい料理人なので、その腕を惜しんだという見方もできる。が、たぶん、奥様は純粋にご好意で言ってくれていたと思う。奥様は優しい人だった。

 ただ、奥様は体も丈夫ではなく、社交もあってお忙しい人だったので、実際に僕たちの面倒を見てくれたのは、ベビーシッターの蝉玉さんだった。

 蝉玉さんは、愛情深くいい人だったが、大らかというか、おおざっぱだった。良くも悪くも僕たちを分け隔て無く扱った。
 そのため、気がついたら、僕は望ちゃんのことを、
 「望ちゃん」
と、呼んでいた。
 あわてたのは僕の両親だ。主家の一人息子を、ちゃんづけ呼ばわりとはとんでもない、というわけだ。なんとか僕に言い聞かせようとしたが、そんなこと幼児につたわるはずもない。どうにか
 「望様」
と、呼ばせることに成功したが、今度は、当の望ちゃんが、大泣きだ。
 結局、奥様が
 「まだ、子供なんだから、いいわよ」
と言い、奥様に甘い旦那様、望ちゃんのお父さんだ、もそれでいいと仰って、そのときは収まった。


 そんなこんなで、3つになった時が、僕たちの人生の最初の分かれ目だった。
 
 望ちゃんは、いい家の子が集まる高級幼稚園へ。
 僕は、なんとか、近くの保育園に滑り込めた。

 この時も望ちゃんは大泣きしたらしいが、そこは3歳児、どうにもなるものでは無かった。
 僕の方は、この時の事をぼんやり覚えている程度だが、望ちゃんは、はっきり覚えているらしい。
 どうにもできず悔しかった、と大きくなってから僕に語った。そして作戦を練っていたとも、言った。

 そう、望ちゃんは、かなりしっかりした子供だった。僕はたぶん普通程度だったと思うが、望ちゃんに比べるとぼんやりとした子供時代を過ごしていた。
 望ちゃんは、自我のはっきりした子で、わがままとは違ったが、子供の頃から、自分の主義主張をする子だった。


 そんな望ちゃんの、最初の盛大な自己主張は、小学校入学の時に発揮された。

 望ちゃんはもちろん上流階級の集まる私立小学校への入学が予定されていた。
 僕?、僕はもちろん地元の公立小学校だ。

 ところが、望ちゃんが、宣言した
 「普賢と同じ小学校に通いたい」
 最初、大人達は笑って取り合わなかった。
 一番、味方になってくれそうな奥様でさえ
「望、普賢とは、学校から帰ってきてから遊べば良いでしょ。これまでと変わらないわよ」
 と言った。

 僕は、この頃、まだモノがよくわかっていなかった。望ちゃんと一緒の小学校に通えたらいいな、と漠然と思っていた。

 望ちゃんと僕は、その頃、日中は別々だったが、家に帰ってくると、二人でいつも一緒に遊んでいた。日中も一緒ならもっと楽しいのに、と僕は思っていた。

 
 望ちゃんは、昼に夜に、奥様と旦那さまにまとわりつき、説得を試みたが、どうにもならなかった。
 そして、望ちゃんは、最終的に実力行使に出た。

 小学校の入学試験に失敗して見せたのだ。

 受験した全ての小学校で、一歩も動かず、言葉も発しなかった。何を言われても頷くでもなく、ぼーっとした子供。
 どんなに、望ちゃんのおうちの家柄が良くても、お金があっても、これでは小学校側も合格させようが無い。

 これには、奥様と旦那様も困り果てたがどうしようもない。お金で入れる私立小学校に押し込むかどうかを、検討していたらしい。
 そこへ、望ちゃんにとっては、助け船が出された。

 家庭教師の老子先生が、言ったのだ
「公立の小学校に通わせては? この辺は治安もいいし通学も問題ないと思う。庶民の生活を知っておくことは、望にとってきっと役に立つ」
 と。
 望ちゃんには、幼稚園に入学したときから、家庭教師がついていた。国語算数、理科社会、古典に英語となんでもござれの先生で、後から考えると凄い人が家庭教師に来ていた。
 望ちゃんは、家庭教師が来た当初こそ、まじめに勉強していた。向学心は元々高い子だったからね。が、すぐにさぼり始めた。どうしたら、真面目に勉学するのか、と尋ねた大人にいった台詞は
「普賢が一緒だったら、退屈しないと思う、真面目に勉強する」
と、それで、僕はなんと一緒に勉強することになった。

 使用人の息子に過ぎない分際で、僕は高度な幼児教育を受ける恩恵に預かった。

 その老子先生の助言もあって、ちゃんと老子先生と勉強する、という条件の下、望ちゃんは、僕と一緒に地元の公立小学校に通うことになった。
 僕は、嬉しかった。望ちゃんと一緒なら小学校は絶対楽しいはずと思った。そう、僕は物事を全くわかっちゃいなかったのだ。

 実際、小学校は楽しかった。

 望ちゃんとは、毎日一緒に登校した。
 望ちゃんは、公立小学校に全く違和感無くなじんでいた。みんな望ちゃんがなんとなく、いいおうちの子だとはわかっていたが、望ちゃんがそれを感じさせなかった。
 望ちゃんと僕は、一緒のクラスになったり、別のクラスになったりしたが、あまりそれで寂しいとは感じなかった。
 休み時間になると、望ちゃんがやってきて、同じクラスの子も他のクラスの子も関係無く遊び始め、学年全員で鬼ごっことか、大縄跳びとかに興じていたからだ。
 望ちゃんを中心に学年全体がまとまり、先生達にもこの学年の団結力は凄いと、ことあるごとに言われた。

 老子先生との勉強は続けられた。
 小学校に入ると、英語以外に中国語の勉強も始まった。算数や理科、歴史や地理の勉強もして、学年より数段進んだところまで、学習の手は伸ばされた。
 この頃になると僕も勉強が楽しくなっていた。特に理科や算数に関しては僕の方が得意だってことがわかってきた。語学は望ちゃんの方が才能があったし、古典なども望ちゃんのほうが得意だった。
 老子先生がこないときは、望ちゃんと二人、英語や中国語で秘密の会話をして楽しんだ。

 ベビーシッターの蝉玉さんに、
「あんたたち、感じ悪い。人にわからない言葉でこそこそ話すんじゃ無い!」
と怒られて、人前ではやめたが、二人っきりだと複数の言語で会話していた。
 その蝉玉さんは、僕たちが高学年になる頃、辞めていった。
 なんでも、休日に道を歩いていて、理想の旦那様を見つけたのだそうだ。土木関係の技術者で、その人が、東南アジアにお仕事で赴任するというのにくっついていった。
 今でも年に一回、僕と望ちゃんそれぞれに年賀状をくれる。元気で幸せにやっているらしい。


 こうして小学校時代は平和に過ぎていった。


 望ちゃんと僕の次の分かれ目は、中学校入学だった。
 
 今度こそ、望ちゃんは、いい私立中学に進学するように言われていた。そこは、中学高校一貫教育で、特に高校は、生徒会長になった者は必ず内閣に入れると、有名な学校だった。
 望ちゃんは、そこに入学して、政財界の次世代の人々と親交を深めることを期待されていた。

 この頃になると、僕もちょっとはモノがわかるようになっていた。
 望ちゃんは、この呂家の跡取りと言うだけで無く、この国有数の財閥、崑崙財閥の跡取りとしてみなされている、ということが。

 奥様、しつこいが望ちゃんのお母さんだ、は、崑崙財閥の娘だった。奥様には、母親違いの年の離れた兄と姉たちがいたが、そのどの人も結婚していなくて、子供がいるのは望ちゃんのお母さんだけだった。

 望ちゃんに言わせると
「公明叔父上は、自己陶酔が強すぎて離婚したし、雲霄叔母上達は女傑すぎる」
というわけだ。
 母親は違うが、望ちゃんのお母さんと、上のお兄さん達の関係は良好で、その息子の望ちゃんを跡取りとして将来的には迎えたいと再三言ってきていた。

 本当は、奥様は、崑崙財閥と呂家と双方の跡取りとして、複数の子供を産むことが期待されていたんだと思う。それが叶わなくて、奥様もおつらかったんだな、と大人になった今では思う。奥様はいつもどこか悲しそうだったから。


 さて、望ちゃんは、
「中学校も普賢と同じところに行く」
と言った。そして、僕が望ちゃんと同じ私立中学に入れるよう旦那様に掛け合い始めた。

 あわてたのは、僕の父さんだ。
「執事の息子がそんな学校に通うなんて話、聞いたこともありません」

 望ちゃんは、学費の援助も含めて旦那様に掛け合ったらしい。普賢なら、自分のいい秘書役になってくれる。ちゃんとした教育をうけさせたい、とかなんとか。

 僕の父さんは固辞した。
「旦那様と望様のお気持ちはありがたいですが、ご勘弁下さい。そんな学校に通っても普賢がつらい思いをするだけです。どうかどうか」

 僕は父さんに言われるまでもなく、この話は断るつもりだった。この頃の僕は、将来、父さんの後を継いで、望ちゃんの執事になるのもいいな、と考えていた。望ちゃんが僕を秘書にと言ってくれたと聞いて、それも良いかもとは思った。それにしても、そんなとんでもない私立学校に行く必要はないって、わかっていた。

 僕と父さんから断られても望ちゃんはあきらめなかった。

「それなら、普賢と同じ地元の公立の中学に行く」
と、言い始めた。
 慌てたのは周りだ。望ちゃんならやりかねない、と誰もが思った。小学校受験の時と同じ戦法をとるに違いない。

 そして、僕に説得役が回ってきた。望ちゃんをくだんの私立中学校に行くように説得しろ、というわけだ。

「望様、皆様のお気持ちわかっていますよね」
 この頃、もう、僕は家では、望様と呼ぶようになっていた。望ちゃんなんて呼べやしないってわかるようになっていた。望ちゃんは嫌がったが、しょうが無い、立場ってものがある。 
 さんざん揉めて、学校では、これまで通りってことでどうにか落ち着いていた。 確かに学校で、様呼ばわりすれば、周りの子供達が不審がる。望ちゃんが良いところの家の子だと知れれば、防犯上良くない。

 「望様、中学はちゃんとした学校に行って下さい」
「公立だってちゃんとした学校だ」
「皆様の仰っていることわかっていますよね」 
「わかっておる。だから普賢が一緒に行ってくれれば良いだけじゃ」
「僕があんな学校行っても、息がつまるだけです」
「わしが、そんな思いはさせぬ」
「小学校までとは、違います。だいたい、そんな分不相応な学校、とんでもないことです」
「わしと一緒の学校に通いたくはないのか」
「望様とは、一緒にいたいですけど、学校が一緒じゃ無くてもいいじゃないですか。家に帰ればこれまで通りなんですから」
「そうだ、勉強したくはないか。私立学校なら、公立校より先の課程に早くすすめるぞ」
「公立だって勉強できます。それに世の中には図書館もあります。勉強したければどうにかなります。そもそも執事の息子にそんなに勉学はいりません」
「執事じゃ無くて、秘書はどうじゃ、それなら、ずっと一緒に居られる。いまから、社長秘書として会う連中の顔を覚えておくのもよかろう」
「秘書として雇っていただけるとしても、そんな学校に通う必要ありません」

 もう、えんえんと堂々巡りだった。

 その果てに、ようやく望ちゃんが
「わかった。どうしても駄目なのだな」
「どうしてもです」
「わかった。くだんの私立学校には1人で行く。ただし条件がある」
「なんですか」

 僕は身構えた。続けて望ちゃんが言った台詞は
「わしのことをこれまで通り呼べ、様はやめい」
「・・・・・・」
「いままで通り呼んでくれるなら、皆の言うとおりにする」
「それは・・・・駄目です」
「駄目なら、この話は振り出しじゃ」

 長い沈黙の後、望ちゃんが言った
「二人っきりの時だけでいいから」

 僕はしばらく考えてから、慎重に言った。
「・・・・本当に二人の時だけですね」
「ああ」

 望ちゃんの表情が目に見えて明るくなった。
「本当に、二人だけですよ」
「あ、老子と一緒の時もじゃ、あやつは気にしまい」
「まあ、そうでしょうけど」
「それから、敬語もやめじゃ、いいな、これまでと同じように、だ」
「・・・・・わかったよ、望ちゃん。これでいい?」
「うむ」

 望ちゃんは、にやりとした。してやったりという子供の頃から何度も見てきた表情を浮かべた。


 こうして望ちゃんは、有名私立中学へ。
 僕は公立中学へすすんだ。ただし、公立の中高一貫の進学校だ。

 望ちゃんは、僕が公立に行くことに了承したが、最後まで僕の進学先について、粘っていた。老子先生を巻き込み、老子先生に
「普賢は、勉強がよくできます。特に理数系については目を見張るものがあります。きっと将来、望の役に立つでしょう。進学先は、私に考えがあります」
と、言わせ、僕を進学校に押し込んだ。

 僕の両親は、最初はこの話も尻込みしていたが、結局、折れた。息子が言い教育を受けられることを喜んでいた。僕の両親は、若干頭が固かったが、息子の幸せを願う善良な人たちだ。


 僕たちは、別の中学へ進学したが、家ではこれまで通りだった。望ちゃんはまっすぐ家に帰り、僕も部活などせず家に帰ってきた。そして、老子先生の授業を受けた。
 この頃になると、望ちゃんと僕は若干別メニューになっていた。僕はあまり語学に才能がなかった。中学に入って始めたフランス語まではどうにかついていったが、その後望ちゃんが始めた、ロシア語や、アラビア語は挨拶程度がやっとだった。
 逆に理数は圧倒的に僕の方が得意なことがいよいよはっきりしてきていた。特に物理の世界は僕を魅了してやまず、望ちゃんには悪いけど、望ちゃんを置き去りに先に進んだ。
 これら全てを老子一人で教えていたのだから、本当に凄い人だったと思う。後で聞いたら、崑崙財閥から派遣されていたらしい。つまり幼少期から、望ちゃんは崑崙財閥の跡取りと目されていたということだ。

 老子先生の授業は、高校に進学した頃から毎日では無くなったが、大学に進学するまで続けられた。僕たちは、老子の来ない日も一緒に机に着き、一緒に勉強する日々だった。



 さて、意に反して進んだ私立中学だったが、望ちゃんは中学生活を楽しんでいた。よく、いろいろ話してくれた。小学校と同じく、周りの人望を集め、友人も多くいるようだった。

 特に、姫発さんという人とはウマが合うらしく、親しくしているようだった。ようだった、というのは望ちゃんが一回も家に友人を呼ばなかったからだ。
 というか小学校の頃から、僕たちは、友人を一回も家に招いたことが無い。望ちゃんはみんなから浮くのを警戒したいたんだと思うし、僕も望ちゃんとの本当の間柄を知られたくなかったんだと思う。望ちゃんとただの友人、そういう風に見られたかったのだと思う。

 そんな望ちゃんは、中学に入ってからも、家に友人を呼ばなかった。まぁ、望ちゃんが友人を呼んでも、使用人の息子がその輪に入るわけにはいかない。どっちにしても望ちゃんの中学の友人関係は、僕には、蚊帳の外だ。
 ただ、望ちゃんがいろいろ話してくれるので、望ちゃんの友人の名前や性格は、僕もよく知っていた。

 その姫発さんだが、お兄さんがいる。伯邑考さんだ。姫家は政治家の家柄で、お兄さんの伯邑考さんは将来後を継ぐことが期待されている。姫発さんとや望ちゃんとは3学年違いで、その時は望ちゃんの学校の高等部の学生さんだった。
 伯邑考さんは、周りの薦めもあって、生徒会の選挙に出ることになった。将来の内閣入りが有力になるという噂のある生徒会の会長選だ。
 望ちゃんは、なんと中学2年にして、その選挙参謀となった。

「兄貴は人の上に立つ器だが、人が良すぎる。太公望、あんたが選挙参謀になって、応援してやってくれ」
と、姫発さんに拝み倒されたと言っていた。
 高校生の選挙参謀を中学生が? と思って話を聞いていたけど、望ちゃんは見事、伯邑考さんを生徒会長の座に押し上げた。 
 学生とはいえ、相当な権謀術数が繰り広げられたらしい選挙戦で望ちゃんは才能を発揮した。もう実に生き生きと、こんな手を使ったとか、あんな手を使ったとか、僕に語った。
 聞いている中には相当卑怯な手もあって、味方からもブーイングだったらしいが、結局、選挙には勝利した。


 そんなこんなもあって、小学校受験に失敗した阿呆息子と世間に言われていた望ちゃんの株は、次第に上がっていった。
 望ちゃんは、社交界に招かれて出て行くようになっていた。
 社交界と言っても、子供でも行っておかしくない場のみだったが、望ちゃんが出て行く機会は、だんだん増えていった。
 崑崙財閥の総帥、元始天尊さまがそう望んだからだ。

 実は、望ちゃんには特技がある。
 簡単に言ってしまうと、人を見る目があった。
 少し話すと、その人の人柄がわかるという特技だった。

 最初に、そう認識されたのは、小学生の頃で、雇い始めた新しいメイドについて
「父上、何故、あんな信用のおけぬ者を雇っているのですか」
と言ったことに始まる。
 子供の言うことと、真に受けなかった旦那様だが、望ちゃんがあまりにしつこいので、執事である僕の父さんに目を配るように言った。
 果たして、そのメイドは窃盗の常習犯で、奥様の宝石をくすねようとしたところを現行犯で捕まった。

 まぁ、そういうことが何回かあって、望ちゃんの特技として認識された。知っているのは、奥様と旦那様、そして崑崙財閥の総帥の元始天尊さまくらいだった。そんな嘘発見器みたいな機能がある人間は好かれないからね。望ちゃんは、賢かったから、それもわかっていて、限られた人間にしか、その特技を明かしていなかった。

 僕は、子供の頃から自然と気づいていた。
 望ちゃんは、小学校の頃から、あの先生は良くないとか、あいつはいいやつだが、親がいかん、とか言っていて、
「なんでそんなこと言うの」
と言ったら、
「なんでわからん」
と言って、そのうち僕も望ちゃん特技に気づくようになったという次第だ。


 そんな望ちゃんを、元始天尊様は利用していた。社交の場に出して、相手が信のおける者かどうか、望ちゃんに見極めを求めた。子供の望ちゃんにそんなことさせるなんてどうかと思うけど、財閥の命運のかかった取引の可否なんてのまで含まれていたらしい。


 望ちゃんは、最初こそ、元始天尊様の言いつけに従って、社交界に出ていたが、そのうちサボるようになった。
 「ああいうところは疲れる。うちで普賢と話している方がよい」
と言って家でだらだらしていた。

 まぁ、そんな調子で、高校3年のその時まで、僕たちは落ち着いた暮らしに安穏としていた。
 僕たちの関係が決定的に変わってしまったのは、その時。高校3年の秋だった。